東京高等裁判所 昭和29年(う)1644号 判決
被告人 藤平信男
〔抄 録〕
弁護人の論旨について。
刑法第五十九条にいわゆる三犯というためには、初犯と再犯、及び再犯と三犯との間に、それぞれ同法第五十六条所定の条件を具備することを必要とするのは勿論、初犯と三犯との間にもまた同一の条件を具備することを要するのはまさに所論の通りである。而して本件記録に徴すると、被告人には原判決摘示のような前科があることが認められるが、その内原判示(1)の刑は同(2)の刑に引続いて執行されたものであるから、右(1)の刑と(2)の刑との間には刑法第五十六条所定の条件を具備していないことは勿論である。従つて本件犯罪は右(1)、(2)の前科に対して刑法第五十六条所定の再犯たる関係にあるにとどまり、同法第五十九条所定の三犯には該らないことが明白であるから、原判決が本件事案に対して同法第五十九条を併せ適用したのは法令の適用を誤つたものというべきであるけれども、同法第五十九条は、三犯以上の者でも再犯の例即ち同法第五十七条の例によるべき旨を規定しているのであるから、原判決が第五十六条、第五十七条を適用している以上そのほかに第五十九条を併せ適用した違法があるからといつて、右法令適用の誤りは判決に影響を及ぼさないから、(最高裁判所昭和二十七年四月十日判決・最高裁判所判例集第六巻第四号第六五三頁参照)論旨は結局理由がない。